製造業における「洗浄」は、単なる清掃ではなく、製品の品質や設備の安定稼働を支える重要な工程です。特に、部品の精密化や生産プロセスの高度化が進むなか、その役割はさらに重要になっています。適切な洗浄を行わないと、不良の発生や生産性の低下につながる恐れがあります。
このコラムでは、産業洗浄の目的や役割、製造現場での重要性についてご紹介します。
産業洗浄の目的
日常生活で行う洗浄と、製造業で求められる洗浄には大きな違いがあります。
家庭では、掃除や洗濯によって汚れを落とすことが主な目的ですが、製造業における産業洗浄は、単なる汚れの除去にとどまらず、製造の品質や設備の維持にも深く関わる重要な役割を担います。
〈産業洗浄の目的〉
製品品質の確保
製品に異物が付着すると、組み立て不良や動作不良の原因となります。
特に、精密部品や電子機器では微細な汚れが大きな影響を与えるため、高度な洗浄技術が求められます。
外観品質の向上
製品の見た目を美しく保つことも、産業洗浄の重要な役割のひとつです。
表面に付着した油や指紋、さびなどを取り除くことで、仕上がりの品質が向上します。
設備の性能維持
装置は長期間使用すると汚れが蓄積し、動作不良や効率低下を引き起こす原因となります。
適切な洗浄を行うことで、設備の寿命を延ばし、予期せぬトラブルを防ぐことができます。
製造工程における洗浄の役割

産業洗浄は、製造工程のさまざまな段階で行われます。
部品の精密化が進む現代において、その重要性はますます高まっています。
加工前の洗浄
ワークの表面に付着した油や異物を取り除き、後工程の品質を確保します。
特に、塗装や接着を行う前の洗浄は、密着性を高めるために欠かせません。
製造中の洗浄
加工や研磨の過程で発生する金属粉や削りカスを除去し、高精度な仕上がりを実現します。
洗浄が不十分だと不良品の発生につながるため、適切な処理が求められます。
最終仕上げの洗浄
顧客の手元に届く前に異物や汚れを除去します。
特に、医療機器や食品機械では、衛生管理の観点からも徹底した洗浄が求められます。
産業洗浄で落とす汚れの種類
産業洗浄で落とす汚れは、性質によって「粒子汚れ」「有機汚れ」「無機汚れ」の3つに分類され、それぞれに適した洗浄が求められます。
粒子汚れ

粒子汚れは、微細な固体粒子が付着することで生じる汚れの総称です。代表的なものとして、粉塵、研磨粉、切削粉、摩耗粉などがあります。
特に、静電気の影響で空気中の塵や埃が付着することも多く、対策が必要です。
- ◎洗浄方法
- 粒子汚れは付着力が弱く、エアブローや超音波洗浄でかんたんに除去できます。
ただし、微細な粒子が複雑なスキマに入り込むと取り除きにくいため、高圧洗浄や特殊な洗浄液が用いられます。
有機汚れ

有機汚れは、油脂類や樹脂成分を含む汚れの総称で、産業洗浄において最も一般的な汚れです。たとえば、切削油、グリス、プレス油、接着剤、フラックスなどが該当します。
これらは製造工程の潤滑や保護のために使用されますが、次工程への影響を防ぐために適切な洗浄が必要です。
- ◎洗浄方法
- 有機汚れは水に溶けにくいため、界面活性剤やアルカリ洗浄液で分解・乳化します。
超音波洗浄を併用すると、細かなスキマの油分も効率的に取り除くことができます。
無機汚れ

無機汚れは、金属表面の酸化膜やスケール、金属くずなどです。これらは熱処理や加工中に金属の表面が酸化することで発生し、外観だけでなく機械特性にも影響を及ぼします。
特に、電子部品や精密部品では、微細な酸化膜が導電性や機能性を損なう原因となるため、適切な洗浄が不可欠です。
- ◎洗浄方法
- 無機汚れは化学的結合が強く、水や通常の洗浄剤では除去が困難です。
そのため、酸性洗浄剤や剥離剤を用いるのが一般的ですが、金属の腐食を防ぐため適切な濃度や洗浄条件の管理が必要です。
汚れの性質を見極め、エアブローや高圧洗浄などの物理的な方法と、洗浄剤を使う化学的な方法を適切に使い分けることで、より効果的な洗浄が可能になります。
「高圧洗浄」と「化学洗浄」

産業洗浄にはさまざまな手法がありますが、特に代表的なのが「高圧洗浄」と「化学洗浄」です。ワークや汚れの性質に応じて適切な方法を選ぶことで、製品の品質向上や設備の維持管理を効率的に行うことができます。
高圧洗浄
高圧洗浄は、水の力で汚れを吹き飛ばす方法です。
強力な物理的洗浄効果があり、水圧を利用するため、薬品を使わずに環境負荷を抑えながら洗浄できる点が特徴です。
| 製品洗浄 | 金属や樹脂の加工で発生する切削粉やスケールを除去 |
|---|---|
| 外面洗浄 | 工場の床、建物の壁、船舶の側面、タンクの内外面を清掃 |
| 管内洗浄 | 給排水管や上下水道の汚れを除去し、流れを改善 |
| 塗装剥離 | 100MPa以上の高圧水で硬質な塗装やライニングを剥離 |
| はつり | 建造物の補修時、粉塵や騒音を抑えながらコンクリート表面を除去 |
特に自走式ノズルを用いると、配管内部や手の届きにくい箇所の洗浄にも対応可能です。
化学洗浄
化学洗浄は、酸やアルカリ、界面活性剤、溶剤などの薬品を用いて汚れを分解・溶解する方法です。
高圧洗浄では除去しにくい油脂や、金属の酸化膜に対して特に効果を発揮します。
| 表面処理前洗浄 | メッキ・塗装・研磨前の表面清浄度を向上 |
|---|---|
| 修理・保守洗浄 | 生産設備や金型、運搬機械のメンテナンス時に油脂や金属粉を除去 |
| 半導体材料の洗浄 | 酸・アルカリ洗浄、オゾン洗浄、超純水洗浄で高純度を維持 |
| 薬品の洗浄 | アルコールやアセトンを安全かつ効率的に除去 |
| 産業機器の洗浄 | ボイラー、化学機械、環境装置、風水力機械、運搬機、原動機などの洗浄 |
ただし、使用する薬剤の選定や濃度管理を誤ると、ワークの劣化や環境負荷の増大につながるため、慎重な運用が求められます。
産業洗浄をもっと知る
最適な洗浄方法を選ぶには、「洗浄の種類」「乾燥方法」「洗浄剤」を理解することが欠かせません。特に最近では、半導体製造など高度なものづくりにおいて、より厳格な洗浄管理が求められています。
洗浄の種類と乾燥方法
- ◎詳しくはこちら
- 産業洗浄の種類と乾燥方法
洗浄剤の種類と環境負荷
- ◎詳しくはこちら
- 洗浄剤の種類と環境負荷
半導体における洗浄
- ◎詳しくはこちら
- 半導体洗浄とは?工程・装置・処理方法
製造現場における産業洗浄とは?まとめ
このコラムでは、産業洗浄の目的や役割、製造現場での重要性についてご紹介しました。
産業洗浄は、単なる清掃ではなく、製造品質や生産効率、設備の寿命にも関わる重要な工程です。適切な洗浄方法を選ぶことで、製品の歩留まり向上や設備の安定稼働につながり、企業の競争力を高めることができます。
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