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工業排水による水質汚濁とスラリー処理、環境問題との関連性から考える

工業排水による水質汚濁とスラリー処理、環境問題との関連性から考える

近年、環境問題への注目がますます高まっています。環境問題は温室効果ガスや大気汚染、あるいは産業廃棄物の問題などさまざまですが、そのなかのひとつに水質汚濁の問題があります。ここでは、水質汚濁の種類や原因について解説し、特に工業排水の環境対策について焦点を当てます。

環境汚染とは、人間の活動によって生じる有害な物質が環境に放出・拡散して、生物の生命や健康に影響を与えることです。特に日本では1950~60年代以降に大きな社会問題となった公害と結び付けられて語られることも多くあります。公害についても述べている環境基本法の第2条では公害の定義として、具体的な環境汚染について言及。大気汚染や土壌汚染と並んで、本記事で主眼とする水質汚濁も挙げられており、「水質以外の水の状態または水底の底質が悪化することを含む」と説明されています。

排水によって引き起こされる水質汚濁

水質汚濁は、人の生活や工場からの有害な物質が含まれた汚水が適切な排水処理を行われずに川や海に放出されたときに生じます。つまり、有害な物質が川や海の水を汚染してしまうことです。排水には生活排水と工業排水がありますが、とりわけ工場からの排水が重要です。「水俣病」や「イタイイタイ病」は、水質汚濁という環境汚染によって引き起こされた重大な公害病です。また、工業排水や原子力発電所の高温排水が周辺の生態系に影響を及ぼし、魚が取れなくなるようなケースも水質汚染に含まれる場合があります。

水質汚濁防止を目的とした工業排水の法的規制

水質汚濁の主な原因となる工業排水は、その処理について法律で規制されています。それが1971年に施行された水質汚濁防止法です。これは、主に工場からの排水に対して、含有される有害物質ごとに排水基準を定めたもので、対象は水銀やカドミウム、六価クロム化合物など28種類。排水基準は全国一律に加えて、工業地帯のような水域に対しては都道府県がさらに厳しい上乗せ基準を設けられるとしています。

水質汚濁の原因は2種類に分けられます。化学物質による汚染と、残渣による汚染です。

化学物質による汚染は、前述したように主に排水処理が不十分な工業排水からのものです。一般的に「水質汚濁」という場合、この化学物質による汚染が連想されるでしょう。

残渣とは、水分を含んだ絞りカスや生ゴミのことです。水分を含んだ土砂(汚泥)やし尿などもこれに当たります。工業排水の分野では、金属加工時に出る削りカスと潤滑油が混じった物質も含まれることも見逃せないでしょう。排水の分野で、残渣は「スラリー(slurry)」と呼ばれます。

スラリーによる水質汚濁の問題点

スラリーはなぜ水質汚濁の原因となるのでしょうか。

水の汚れの度合いを表す指標に「BOD」というものがあります。BODとは、川や海の水に生息する微生物が水の汚れを分解する際に使う酸素の量で、水の汚れ度合いが高いとBODの値が高くなります。

特に有機物による汚染度合いが高いとBODは高い値を示す傾向にあり、下水や食品由来のスラリーにはこの有機物が非常に多く含まれています。BODの値が高いため、微生物によって水中の多くの酸素が使われ、結果として魚の窒息死のような事態を引き起こしてしまうのです。

これは有機系スラリーの例ですが、スラリーに含有されるものが環境に影響を与えてしまうため、排水に際しては正しくスラリーを処理しなくてはなりません。

水質汚濁の原因となるスラリーには下水由来のものと工場由来のものがありますが、ここでは工場由来のスラリーに焦点を当てて、水質汚濁の事例を見ていきましょう。

なお、工場での排水処理についてはこちらの記事でもご紹介しています。

→「工場の排水処理とは? その種類やメッキ工場や半導体工場の具体例とあわせて解説」

酒造工場で発生するスラリー

スラリーは含有するものによって有機系と無機系に分けられますが、有機系スラリーの例として酒造工場で日本酒を製造する工程を考えてみましょう。

まず、原材料である米を熱して蒸し、そこに米麹を加え発酵させます。発酵が十分に進んだ段階で、上澄みだけをろ過し、清酒とします。そして、沈殿物は酒粕となります。

この沈殿物を含んだ状態が有機系スラリーなので、排水するわけにはいきません。そこで、固形物である酒粕と水分とを分離し、処理する必要があるのです。なお、酒造工場の場合にはスラリーの処理から副産物として酒粕という製品ができています。

化学工場で発生するスラリー

化学工場で発生する化学物質を含んだスラリーは無機系スラリーの場合が多いです。化学工場では製造の過程でさまざまな化学反応を用いますが、反応の副生成物がスラリーという形で残る場合があります。

これをそのまま排水してしまうと化学物質を含んだ汚水となり、法的規制の対象となります。また、プラチナといった触媒は高価なため、スラリーに含まれるそうした貴金属を回収して再利用することが多くあります。したがって、ここでも固液分離によるスラリー処理が重要となります。

固液分離については、こちらの記事もご参照ください。

→「固液分離の目的とメリット―固液分離の方法ごとの特長も紹介」

建設業で発生するスラリー

建設業では、河川や港湾の浚渫(しゅんせつ)のような工事でスラリーが発生します。ここでいうスラリーとは、産業廃棄物処理法に規定する法律上の「汚泥」として取り扱うものを言います。ダンプトラックに山積みできず、その上を人が歩けないようなドロドロの流動性が高いものです。

このスラリーは水分を飛ばしたものを建設資材として、あるいは埋め立て用の土砂として再利用可能です。こうした用途のためにも、やはりスラリーの処理が必要になります。

汚泥を処理し再利用する方法については、こちらの記事でも解説しています。

→「脱水ケーキ―脱水の方法と種類、再利用の可能性について」

以上、水質汚濁とスラリー処理の関係について述べました。スラリーは生成過程で有機物・無機物を多く含んでおり、そのまま排水してしまうと水質汚濁の原因となります。スラリーの成分を分析して対応を考えることで、適切な処理が可能となり、場合によっては再利用まで考えられます。

本文でもご紹介したように、スラリー処理に欠かせないのが固液分離です。アイオンのPCセパレーターは、独自の円筒型多孔質ろ材を使用した、高性能でコンパクトタイプの連続真空固液分離装置(脱水機)です。固形部分の回収力と脱水能力が高く、高価な粉体を効率よく分離・回収し、ランニングコストも安価で経済的です。スラリーの固液分離についてお考えの際には、ぜひご検討ください。

PCセパレーター

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アイオン独自の円筒型多孔質ろ材を使用した、高性能でコンパクトタイプの連続真空固液分離装置(脱水機)です。
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