アイオン株式会社

  • ホーム
  • コラム
  • 脱水ケーキ―脱水の方法と種類、再利用の可能性について

COLUMNコラム

脱水ケーキ―脱水の方法と種類、再利用の可能性について

脱水ケーキ―脱水の方法と種類、再利用の可能性について

脱水ケーキは、排水処理や製造現場からの排出によって発生する汚泥を処理するうえで、特性や処理方法を考えなければならない重要なもののひとつです。脱水ケーキについて、脱水の方法や取り扱いの注意点、再利用されている例などをご紹介します。

排水処理や産業廃棄物の処理過程で、廃棄物を脱水ケーキの状態にすることはどのような意味を持つのか、脱水ケーキの意味も含めて見ていきましょう。

脱水ケーキとは

脱水ケーキとは、水分を含む産業廃棄物や汚泥を脱水処理したもののことを言います。水分をなくして流動性の低いペースト状にしたものをケーキと呼び、主に排水処理において汚泥を脱水した結果作られるものが脱水ケーキです。

排水処理や下水処理の過程において発生する汚泥は、そのまま保管しておくと含まれる有機物が腐敗し、悪臭の原因となります。また、有機物を餌にして雑菌が繁殖することもあります。このような周辺環境や人体への影響を最小限にするため、汚泥を早急に処理しなければなりません。

こういった汚泥の処分方法として最も多く行われているのが焼却処分です。しかし、水分を多く含む汚泥を、そのまま焼却処理するのは効率的ではありません。

水分を多く含む汚泥は仮保管のスペースが多く必要となるだけでなく、重量があるため運搬コストも肥大化します。また、焼却する場合も長時間かけなければ燃やすことができず、燃料費を含めたコストが大きくなってしまいます。

そこで必要となるのが、脱水ケーキの状態にする過程です。汚泥を脱水してケーキの状態にすることで、体積と重量を小さくし、燃焼効率も高めることができます。これにより、保管・運搬・焼却のコストが低減され、取り扱いも容易になるためそれぞれの作業も効率化します。

脱水ケーキの含水率

脱水処理をしても脱水ケーキには水分が含まれます。この含まれる水分の割合を含水率といい、脱水ケーキの特性にも深く関係します。

代表的な脱水ケーキの含水率は次の通りです。

  • 一般下水
    含水率は6585%です。7090%の有機物を含みます。
  • し尿
    含水率は8085%です。7090%の有機物を含みます。
  • 食品工場からの有機物を含む廃棄物
    含水率は8090%です。8090%の有機物を含みます。
  • 一般製造工場からの無機物の廃棄物
    含水率は4080%です。有機物はほぼ含まれません。

一般的に含水率が高いほど流動性が高く、含水率が低いほど流動性は低くなります。

汚泥を脱水ケーキの状態にする脱水処理には、代表的なものとして次のような手法があります。

真空脱水

負圧により、ろ材やろ布を通して汚泥から水分を取り除く方法です。

連続真空脱水機では、ドラムといくつかのローラーに沿ってろ布を回転させる方法、ろ材によってできたローラーを直接回転させる方法などがあります。

ドラムには多孔質素材やパンチングされた金属が使われ、ドラムの一部が汚泥層に浸かった状態で回転します。ドラムは内部に向かって負圧がかけられていて、ろ材やろ布によって水分だけがドラム内部に吸引されます。汚泥を表面に付着させながらドラムが回転することで、ろ材やろ布の表面で脱水ケーキが形成されます。

そして、ナイフによって脱水ケーキがろ材またはろ布からかき取られ、表面が更新されて再び次の脱水作業に入ります。

遠心脱水

遠心力を使い汚泥を脱水する方法です。

遠心脱水機にはさまざまな方法がありますが、代表的なものとして二重のドラムを使うものがあります。外ドラムの内部で、内ドラムを高速回転させます。内ドラムには外周にらせん状のスクリューがあります。

内ドラムの内部から供給された汚泥は、回転する内ドラムの内部で遠心力により水分とそれ以外の成分にある程度分離されます。内ドラムの穴から外ドラム内部へと排出されたあと、スクリューによってさらに水分とそれ以外の成分に分離され、脱水ケーキが外ドラムの端から排出されます。

ベルトプレス脱水

2枚のろ布によって汚泥を挟み込み、圧力をかけることで脱水する方法です。

ろ布でできたベルトを複数のローラーに沿って回転させますが、2枚のベルトの軌道は重なった状態で同じ軌道を進む部分と、分かれて別軌道を進む部分があります。1枚だけの部分でベルトに汚泥を載せ、2枚が重なる部分へと進むと汚泥が挟み込まれます。複数のローラーによって蛇行しながらベルトが進むことで汚泥が圧縮され、水分は下へ落ち、ベルト上に残った脱水ケーキは再び2枚のベルトが別軌道となる部分で排出されます。

スクリュープレス脱水

細かい穴の空いたスクリーンの上を、汚泥がスクリューによって押されながら進むことで脱水される方法です。

スクリーンは円筒状になっていて、その内部でらせん状のスクリューが回転します。スクリーンとスクリューの隙間は先へと進むほど狭くなり、スクリューによって汚泥が押されて先端へと近づくに従って圧搾されます。スクリーンの微細な穴から水分は下に落ち、スクリーンの端から脱水ケーキが排出されます。

これらの脱水処理のあと、脱水機から排出された脱水ケーキは容器に入れられますが、容器までの移送方法には注意が必要な点もあります。

脱水ケーキはコンベヤーで移送されるほか、パイプ内を圧送する方法によって移送されることもあります。このとき含水率の低い脱水ケーキは流動性が乏しく、ポンプによる移送が困難です。ポンプを負圧側に設置すると吸い込めないため、加圧側に設置して押し込む方法が取られます。

また、配管内での抵抗にも注意が必要です。脱水ケーキと配管内壁との摩擦抵抗によって移送に必要な力が大きく変わるため、配管内の抵抗を小さくする工夫が求められます。配管全長を短くする、配管直径を大径化する、潤滑剤を用いるなどが一般的な解決策となります。

有機物を含む脱水ケーキは、そのまま放置すると腐敗が進み悪臭や感染症の原因になるため焼却されます。また、無機物の脱水ケーキも、さらに含水率を下げ純粋な無機物化する目的で、同様に焼却されます。

こうして焼却された脱水ケーキは埋め立て処分されるものもありますが、次のような再利用の方法も研究され、実用化されている例もあります。

  • 造成工事の盛土
  • 路盤材
  • セメント材料
  • レンガ材料
  • 肥料
  • バイオマス発電
  • 固形燃料化と発電
  • 熱分解ガス発電

このなかで、盛土や路盤材としての使用は、化学的安定のためにセメントや石灰を混合したうえで使用されます。また、強度特性の測定方法としてコーン指数が用いられ、一定以上の値になるよう基準が設けられています。

セメントやレンガの材料としては、強度を確保するために固化材の添加や混練を繰り返す必要があります。

食品工場からの廃棄物のような有機物を多く含む脱水ケーキは、発酵させることで肥料化することが可能です。実際に脱水ケーキから作られた肥料が農地や緑地に還元されています。

脱水工程と連動した発電や、脱水ケーキを燃料とした発電は、すでに多くの自治体で導入されています。バイオマスでは、脱水ケーキを発酵させることで生まれるメタンガスを燃焼させて発電します。

固形燃料化技術では、脱水ケーキを高温乾燥させて燃料化することに成功しています。これを燃やすことで発電にも利用可能です。また、脱水ケーキを乾燥後に高温焼却炉でガス化し、H2COなどのガスを製造したり、その燃焼熱によって発電したりする熱分解ガス発電も開発されています。

人の暮らしや工場の操業において下水処理や排水処理は欠かせないものであり、その過程では必ず汚泥の処理も課題となります。このとき汚泥を脱水ケーキにする過程は、環境への配慮、運搬や保管のコスト、焼却効率への対策などのために必要なものです。汚泥のもととなっている成分や目指す含水率も考慮して、脱水処理方法を検討する必要があります。

工場の場合、排水処理は製品を作る作業ではないため、お金を生み出すことにはつながらず、生産性を伴わない工程となります。そのため、可能な限り手間をかけずに、省スペースで処理することが望まれます。

アイオンの連続真空固液分離装置(脱水機)PCセパレーター」は、コンパクトな設置スペースで高い脱水能力を持ちます。真空脱水の方法を採用しながら、ドラムそのものが多孔質素材でできているためベルトの軌道を確保する必要がなく、省スペース化を実現しています。

PCセパレーター

PCセパレーター

アイオン独自の円筒型多孔質ろ材を使用した、高性能でコンパクトタイプの連続真空固液分離装置(脱水機)です。
ページトップへ