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工場の排水処理とは?その種類や排水処理の具体例とあわせて解説

工場の排水処理とは?その種類や排水処理の具体例とあわせて解説

工場の排水処理は、近年の環境意識の高まりからますます重要になっています。そして、そのために必須となる排水処理技術は、長年の研究の末、高度で完成されたものとなっています。ここでは排水処理の対象や種類について述べ、特にメッキ工場や半導体工場の排水処理について説明します。

工場の排水処理とは、工場から排出される水を処理して、環境に対する影響を低いものにすることを言います。

工場で製品を製造すると、必ず廃棄物が出ます。廃棄物は必ずしも有害なものだけではありませんが、多くの場合、何らかの有害物質を含んでいます。工場の排水は人体に有害な化学物質を含む場合があるため、工場では排水処理が欠かせないのです。

排水処理技術の発展は、1950年代に水俣病やイタイイタイ病などさまざまな公害病が発生し、社会問題となったことが契機となっています。これらの公害病は、人体に有害な化学物質が含まれた工業排水に適切な排水処理を行わず、そのまま河川や海に流していたことが原因でした。

これらの公害病は被害が非常に深刻かつ悲惨だったため、法的な規制を求める声が強くなり、1970年代になって法規制されるようになりました。これがきっかけとなって排水を処理する技術が発展し、現在のような高度なものとなりました。現在ではほとんどの工場で、法律で決められた排水基準を大きく下回るクリーンな排水が行われています。

排水処理の対象は水に溶ける廃棄物全般です。これらは汚濁物質と呼ばれ、大きく分けると「無機物」と「有機物」の2つがあります。

無機物

無機物には水銀、リン、クロム、ヒ素、カドミウムなどの重金属が含まれます。これらは毒性が高く、人体に入ると直接的に重大な健康被害をもたらします。例えば、イタイイタイ病の原因であるカドミウムは、体内に蓄積するとまず腎臓障害、次いで骨軟化症、骨粗しょう症を引き起こし、全身の骨の変形やごく軽い衝撃での骨折といった恐ろしい症状を引き起こします。また、水俣病の原因物質である水銀は胎児に影響を及ぼし、先天的な知的障害や身体障害、精神障害の原因となります。

このような被害を絶対に起こさないためにも、確実な排水処理が欠かせません。

有機物

有機物に分類される主な汚濁物質は、汚泥、生ゴミ、食品の搾りかす、食用油、工業用油などです。こうした有機物が処理されずに河川に放出されることによる被害のひとつが、プランクトンが異常に増えてしまうことによって発生する赤潮です。また、有機物は腐敗するものも多く、衛生上の観点からも適切な処理が必要です。

加えて注意したいのが、有機溶剤やダイオキシンなども有機物に含まれるということです。言うまでもなく、有機溶剤やダイオキシンは人体に直接的な毒性を持つものですので、厳重な排水処理が必要となります。

このように重要な工場での排水処理ですが、その方法には大きく分けると「分離」と「分解」の2種類があります。

分離

分離は汚濁物質と水とを分けることですが、化学反応を利用する方法と、物理的に分離する方法の2つが代表的です。

化学反応を利用するタイプは、汚濁成分と反応する薬剤を排水中に投入し、汚濁物質を化合物化します。すると、汚濁物質の化合物の比重が変化し容器の底に沈むので、この比重の違いを利用して汚濁物質と水の分離を行います。この手法は沈降分離と呼ばれます。汚濁物質がイオン化している場合には、化学反応により固体化します。

一方、物理的な分離法はフィルターを使うもので、汚濁物質の粒子が大きい場合に用いられます。RO膜(逆浸透膜)や活性炭により微粒子をこし取ることで除去する方法です。

分離は金属やフッ素など無機物質を含んだ排水の処理に用いられることも多く、このほかにも酸化還元反応による酸化分離、沸点の違いを利用した蒸留などがあります。

分解

分解は、汚濁物質を何らかの手段で分解し無害化する方法です。主に有機物の排水処理に用いられます。有機物は最終的には二酸化炭素と水に分解されますが、多くは細菌やバクテリア、プランクトンなどの微生物による分解です。食品工場や農場などから排出される、有機物を含んだ排水を処理する際に用いられることが多く、活性汚泥という微生物を含む汚泥に排水を通して有機物を分解、有害な成分を取り除きます。

なお、実際の排水処理は処理対象となる排水の成分を見極めて、分離・分解の2つを組み合わせて処理が行われます。また、排水中に固形物の割合が多い場合、つまり後述するスラリー化している場合には、固形物と水分を分離する機械的な分離装置(セパレーター)を使用した方が有利な場合もあります。

アイオンのPCセパレーターは、独自の円筒型多孔質ろ材を使用した、高性能でコンパクトタイプの連続真空固液分離装置(脱水機)です。固形部分の回収力が高く、高価な粉体を効率よく分離・回収し、ランニングコストも安価で経済的です。加えて、脱水能力も高いことから、排水中の固形分の分離にも適しています。

こちらから、さらに詳細についてご覧いただけます。

ここからは排水処理の具体例として、メッキ工場や半導体工場でのケースを見ていきましょう。どちらにも共通した基本的な排水処理の手順は、最初に排水に含まれる金属イオンやフッ素イオンなどを「フロック」という微細な粒子として析出させ、次にそれらを沈降させるための作業を数段階にわたって行うというものです。

メッキ工場のように排水の中に金属を含む場合

メッキ工場での排水の場合、最初に排水のイオン濃度を調整して対象の金属イオンを水酸化物化します。次に、無機凝集剤(塩化第二鉄(FeCl3))や高分子凝集剤(ポリアクリルアミド(PAM))などを用いて、凝集処理を行います。

例えば、金属がニッケルの場合を考えてみましょう。最初に行うのは、イオン濃度調整剤となるカセイソーダ(NaOH)などを用いて調整し、ニッケルイオンを水酸化物化させフロックを生成することです。次に行う処理は、フロックの大きさに応じて以下のように変わってきます。

  • フロックサイズ:0.1µmレベル(インフルエンザウイルス程度の大きさ):この状態では自然沈降することはほぼありません。そこで無機凝集剤などを加え、共沈作用によりフロックを大きくします。
  • フロックサイズ:10µmレベル(スギ花粉程度の大きさ):時間をかければ自然沈降できるレベルですが、まだ十分とは言えません。そこで、高分子凝集剤によりフロックを粗大化、沈降させます。
  • フロックサイズ:100µmレベル(海浜の砂程度の大きさ):数分で沈降するレベルです。

このようにフロックを成長させたあと、凝集処理により粗大化したフロックを含む排水は沈殿槽に投入され、フロックのみがここで沈降し、排水から分離されます。沈降が速いほど処理効率が上がるため、沈降速度は大変重要です。

ここで分離された水は、さらにろ過や中和などの処理を経て下水や河川などに放流、もしくは工業用水として工場内で再利用されます。槽底に沈殿したフロックについては「汚泥(スラリー)」として汚泥処理に送られます。

通常、これまでの処理工程で分離・沈降された汚濁物質であるフロックは、スラリーとして沈殿槽から引き抜かれ、スラリーをためておく汚泥貯槽に送られます。ここでためられた汚泥は多量の水を含んでいるため、重い・かさばる・水がしたたるなど扱いにくいものになっています。スラリーの重量や容積は廃棄コストに直結するため、通常、廃棄前に脱水を行って軽い・小さい・扱いやすいものにします。一般的には、セパレーターと呼ばれる装置を使用してスラリー中の水を搾り出します。

なお、汚泥を脱水処理した脱水ケーキの取り扱いについては、「脱水ケーキ―脱水の方法と種類、再利用の可能性について」もご参照ください。

半導体工場のようにフッ素(F)イオンを含む排水の場合

フッ素イオンを処理する場合は、金属イオンのようにイオン濃度調整で水酸化物化ができません。そこで、フッ素イオンをカルシウム(Ca)イオンと反応させ、フッ化カルシウム(CaF2)として排水中に析出させる方法が一般的です。

その後の処理は基本的に上記の例と同じで、無機凝集剤や高分子凝集剤などを用いて水中のフロックを凝集させます。

ここまでで見てきたように、排水処理を行うと必ずスラリーが発生します。スラリーは固形分と水分が混じった残渣です。したがって、スラリーからさらに水分を搾り出す必要があります。上記の具体例ではフロックはスラリーとなっているので、ここからさらに水分を取り除いて乾燥させる必要があるというわけです。

工業的な乾燥には、天日干しのような方法ではなく、加熱による乾燥や真空乾燥装置を用います。ただし、加熱による乾燥はエネルギーを消費し、稼働コストがかかるため採用しにくい面があります。

そこで、排水処理に伴うスラリーの処理には、主に真空固液分離装置(脱水機、セパレーター)と呼ばれる機械が使われることが多いのです。

固液分離については、「固液分離の目的とメリット―固液分離機の種類ごとの特長も紹介」で詳しく解説しています。

以上、工場における排水処理の概要を見てきました。「製品を作る」という工場の役割からすると、排水処理は後工程に分類されるものですが、仮に不備があれば人体や周囲の環境に重大な影響を与える可能性もあるため、大変重要な工程です。冒頭にも述べたように、排水処理はすでに長年研究されてきた技術ですが、近年の製造工程の多様化・複雑化に対応して、あらためて排水処理を考えていく必要もあるでしょう。排水処理に関しての疑問や改善方法について知りたい場合には、専門業者に相談してみることがおすすめです。

PCセパレーター

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アイオン独自の円筒型多孔質ろ材を使用した、高性能でコンパクトタイプの連続真空固液分離装置(脱水機)です。
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