工場や医療機関など、空気中よりも清潔な環境が求められる場所に設置されるクリーンルーム。しかし、一口にクリーンルームと言ってもその清浄度合いはさまざまです。清浄度の基準を明確にしたのが「クラス」であり、業種によって求められるクラスが異なります。本記事では、クリーンルームのクラス分けや業種別に求められるクラスについて紹介します。
クリーンルームのクラスとは
クリーンルームのクラスとは清浄度、つまり「空気中の微粒子がどのくらい少ないか」、「クリーンルームがどのくらいきれいか」を表します。クリーンルームは一般的な室内と比べて清潔な環境が必要なため、空気中に存在する微粒子の量によって清潔さを分けて管理しています。これが「クラス尺度」と言い、クラス尺度の数字が小さいほど微粒子が少なく、大きいほど微粒子が多い環境のことを指します。
また、クリーンルームのクラスを表す規格には後述するようにアメリカ連邦規格、ISO規格、JIS規格などがあります。これまではアメリカ連邦規格が使われることが一般的でしたが、近年、国際統一規格であるISO規格に徐々に移行されています。
クリーンルームのクラス分け
クリーンルームのクラス分けは、大きく分けて2種類です。いずれも数字が小さいほど清浄、大きいほど微粒子が多いと分類されます。
アメリカ連邦規格(FED規格)
アメリカ連邦企画は日本でもっとも古くから使われている規格で、慣習的に今でももっとも多く使われています。1立方フィート(28.3リットル)あたりに含まれる、粒径0.5μm以上の粒子の数でクラスが分けられています。1立方フィート(28.3リットル)の空気中に漂う0.5μmの粒子の数がそのままクラス名になるため、わかりやすい表し方だとも言えるでしょう。
クラス/粒径 |
0.1μm |
0.2μm |
0.3μm |
0.5μm |
5μm |
---|---|---|---|---|---|
クラス1 |
35 |
7.5 |
3 |
1 |
|
クラス10 |
350 |
75 |
30 |
10 |
|
クラス100 |
750 |
300 |
100 |
||
クラス1,000 |
1,000 |
7 |
|||
クラス10,000 |
10,000 |
70 |
|||
クラス100,000 |
100,000 |
700 |
ISO規格
ISO規格は1999年に国際的な統一規格として制定されたもので、1立方メートルあたりに含まれる粒径0.1μm以上の粒子の数でクラスが分けられています。クラスの数字は、粒子の数を「べき乗」で表したときの指数を示すため、例えば1立方メートル中に0.1μm以上の粒子が10,000個あった場合は、10の4乗なため「クラス4」と表されます。
クラス/粒径 |
0.1μm |
0.2μm |
0.3μm |
0.5μm |
1.0μm |
5.0μm |
---|---|---|---|---|---|---|
クラス1 |
10 |
2 |
||||
クラス2 |
100 |
24 |
10 |
4 |
||
クラス3 |
1,000 |
237 |
102 |
35 |
8 |
|
クラス4 |
10,000 |
2370 |
1020 |
352 |
83 |
|
クラス5 |
100,000 |
23,700 |
10,200 |
3,520 |
832 |
29 |
クラス6 |
1,000,000 |
237,000 |
102,000 |
35,200 |
8,320 |
293 |
クラス7 |
352,000 |
83,200 |
2,930 |
|||
クラス8 |
3,520,000 |
832,000 |
29,300 |
|||
クラス9 |
|
|
|
35,200,000 |
8,320,000 |
293,000 |
JIS規格もISO規格と算出方法は同じなため、概ね同じものと考えて良いでしょう。ただし、JIS規格ではクラスの分類が1〜8までしかないことに注意が必要です。
ISO規格とアメリカ連邦規格の対応
ISO規格とアメリカ連邦規格は、以下のように対応しています。
ISO規格 |
アメリカ連邦規格 |
---|---|
クラス3 |
クラス1 |
クラス4 |
クラス10 |
クラス5 |
クラス100 |
クラス6 |
クラス1,000 |
クラス7 |
クラス10,000 |
クラス8 |
クラス100,000 |
ISO規格とアメリカ連邦規格は、厳密には基準としている粒子の大きさが異なるため、完全に一致するわけではありませんが、だいたいの対応として上記のようになっています。
クリーンルームの業種別クラス
一口にクリーンルームと言っても、業種や感染症などによって求められるクラスが異なります。
産業分野 |
求められる清浄度クラス |
対策 |
---|---|---|
半導体工場 |
クラス3〜5(1〜100) |
集積回路、エッチング、蒸着や研磨などにおけるハイレベルな塵埃管理 |
電子部品工場 |
クラス5〜7(100〜10,000) |
プリント基板、ディスク、コンデンサーなど製品の生産性向上と品質管理 |
光学機械工場 |
レンズやカメラ、レーザーなど高精度製品への対応と品質管理 |
|
精密工場 |
時計、ロケット用部品、ミニチュアベアリングなどに対応する微細塵埃の除去と製品の品質管理 |
|
薬品・食品工場 |
クラス5〜8(100〜100,000) |
乳製品や醸造品、食肉加工における虫の混入対策 |
印刷工場 |
クラス6〜8(1,000〜100,000) |
製品の仕上がりの向上と品質管理 |
自動車部品工場 |
部品製造における鉄の切粉・鉄のコゲ・くずなど目に見えるもの |
|
手術室、治療室 |
手術室、ICU、検査室における空気感染を考慮、患者と医師の保護 |
ISOクラス3〜5(アメリカ連邦規格1〜100)は非常に厳しいレベルで、半導体工場以外にも細胞培養研究施設など、ごくミクロなものを扱う場所で求められます。電子部品や光学機械であればその下のISOクラス5〜7(アメリカ連邦規格100〜10,000)レベルがあれば十分です。医療分野であれば、手術室や治療室などの一般的に清潔が求められる場所であっても、ISOクラスでは6〜8(アメリカ連邦規格1,000〜100,000)があれば問題ありません。
クリーンルームの異物について
最後に、クリーンルームに紛れ込みやすい異物について解説します。さまざまな工場や医療施設などにおいて、どこでも紛れ込みやすいものに「繊維くず」と「金属片」があります。ここでは、これら2つを中心にクリーンルームの異物について見ていきましょう。
繊維くず
繊維くずは軽量で飛び散りやすく、静電気を帯びやすいため、清掃のたびに宙に舞ってしまい除去しきれず、異物として紛れ込みやすいものです。生産材にも多く含まれており、クリーンルームから繊維くずを完全に除去するのは非常に難しいとされています。
繊維くずが多い理由のひとつとして、人間の衣類の原料として使われていることが挙げられます。昔ながらの天然素材や現在の化繊素材は、短く細い繊維を使っていることが多いため、衣類から落ちて飛散してしまうのです。
金属片
金属片はどの工場でも出てしまいがちな異物ですが、繊維くずとは異なり重いため清掃で取り除きやすいものです。しかし、製品に付着すると硬いことから微小な傷をつけたり、導通に影響したりする可能性があり、性能そのものに影響するという面で非常に厄介な異物です。
その他の異物
クリーンルームで見られるその他の異物として、以下のようなものがあります。
- 食品・製薬…塩ビなど装置由来の異物、虫、毛髪など
- 塗装や表面処理…塗装かす、コンベアかす
このような異物があれば清浄度に大きく影響されるため、必ず除去と入念な清掃、また発生原因の特定などを行いましょう。
クリーンルームを清潔に保つならハイレベルな清掃が必要
クリーンルームに求められるクラスは主にISO規格やアメリカ連邦規格の2種類がありますが、いずれの場合でも粒子数が厳格に決まっており、業種別に求められるクラスが異なります。なかでももっとも清潔な環境が求められる半導体工場では、クラス3〜5(1〜100)の清浄度が求められるため、ハイレベルな塵埃管理が必要です。
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