クリーンルームはすでに清潔で、清掃の必要はないようなイメージをお持ちの方もいるのではないでしょうか。しかし、実際には、クリーンルームであるからこそ清掃が必要であり、清掃が持つ意味も大きいのです。そこで本記事ではクリーンルームの清掃方法や清掃時のポイント、清掃用具の選び方などについてご紹介します。
クリーンルームの清掃が必要な理由
クリーンルームとは、「清浄な状態が保たれている部屋」のことを指します。
この清浄状態を維持するためには清掃が不可欠です。清掃されていない部屋は通常の部屋と変わらず、クリーンルームではなくなってしまいます。しかし、見た目にはゴミや汚れのないクリーンルームにおいて、清掃をすることは本当に意味があるのでしょうか。クリーンルームを維持するために清掃が必要な理由をより詳しく見ていきましょう。
微粒子が清掃の対象
クリーンルームで清掃の対象となるのは、目に見えないほどの大きさの微粒子です。
微粒子と呼ばれるのは0.1μm~100μmと非常に小さなサイズの粒子で、こういったものをゴミとして除去しなければなりません。
目に見えない微粒子が対象となるため、一見きれいに見えるクリーンルームも清掃をする必要があります。
作業者が移動すると微粒子が飛散
床に堆積している粒子は、作業者が歩行したり機器を移動したりすると再び飛散する可能性があります。これにより、空気の清浄度が低下してしまいます。
そのため空気中の清浄度を維持するためには、床に堆積している粒子を取り除く必要があります。
微粒子はあらゆる方向に付着
大きな塵や埃などは床に落ちていきますが、微粒子はあらゆる方向に飛散し壁や天井にも付着します。
また、こういった微粒子は同じ場所に付着したままにはなりません。空気の動きによって再び付着している場所から離れ、飛散し、また別の場所に付着します。
このように、あらゆる箇所に微粒子は移動し付着する可能性があるため、すべての方向を清掃する必要があるのです。
クリーンルーム清掃、基本の3種類
クリーンルームを清掃するとき、基本の清掃方法は3種類なります。
- バキューム清掃
- 純水による水拭き清掃
- 専用の洗剤または溶剤による拭き取り清掃
この3種類の清掃は次のような手順で行います。
バキューム清掃
まずクリーンルームの清掃は、比較的大きな粒子を除去するためにバキューム清掃を真空掃除機によって行います。
真空掃除機は、吸引器が別の場所に設置されているセントラル方式か、HEPAフィルターまたはULPAフィルターが内蔵された掃除機を用います。これは、吸引した粒子を再びクリーンルーム内に撒き散らさないためです。
このように最初に大まかな粒子を取り除くためにバキューム清掃を行い、次に細かい部分の清掃を行います。
水拭き清掃
バキューム清掃後には水拭き清掃を行います。水拭き清掃は、バキューム清掃で取り切れなかったさらに小さな粒子を除去するために行います。クリーンルームの水拭き清掃には不純物が少ない純水を用いるのが基本です。
清掃に用いる道具としては、ワイパーやモップ、スポンジが一般的です。
基本の手順としては、清掃作業者自身に向かって清掃用具を動かし、往復はせずに一度のストロークで拭き取ります。また、使用する純水も頻繁に交換しましょう。こうすることで再汚染を防ぎながら確実な清掃が可能になります。
ワイパーやモップなどで広範囲を清掃したあとは、さらに部屋の角や隅などはスポンジを使用して細かい清掃が大切です。清浄度を上げるためには隅々まで徹底した清掃を心がけましょう。
専用の洗剤または溶剤による拭き取り清掃
純水では落としきれないような汚れは、専用の洗剤や溶剤を使用して清掃する場合もあります。
使用する洗剤や溶剤はクリーンルームでの使用が可能で、クリーンルームで取り扱っているものに対して影響のないものを選びましょう。
基本的にはワイパーを使用し、必要に応じてポリッシャーを使用します。清掃中は純水での清掃に比べ滑りやすいため注意が必要です。
最後に洗剤や溶剤を使用して清掃したあとは、純水で十分に拭き上げ洗剤や溶剤が残らないようにします。
クリーンルーム清掃時のポイント
クリーンルームの清掃は次のような手順やポイントを抑えて行うことが重要です。
上から下へ
クリーンルームにおいて異物となるゴミやホコリ、粒子などは重力によって高い場所から低い場所へと落ちます。
このとき、下から上へと掃除すると、一度掃除した低い場所にまたゴミを落としてしまう可能性があります。
そのため上から下へと掃除を進めていくことで、掃除の漏れを抑えることができるでしょう。
奥から手前へ
手前から奥へ向かって掃除した場合、清掃用具や作業者自身の腕が掃除した箇所の上を通って戻ることになります。このとき、清掃用具からの汚れの脱落や、腕からの発塵によって再汚染の可能性があります。
奥から手前へ向かって掃除を進めることで、一度の清掃で再汚染されることなく清掃ができます。
狭い場所から広い場所へ
室内における清掃中の作業者の動きを考え、一度掃除した場所を踏まないように進めることが重要です。
最初に狭い場所や隅を掃除し、広い場所をあとから掃除することで効率よく再汚染のない掃除が可能になります。
拭き取りあとを残さない
水拭き清掃において、拭き取りあとはゴミが大量に集められたまま残っている状態の場所となってしまいます。
こういったゴミは時間が経つにつれて落ちにくくなったり、乾燥して飛散したりすることで再汚染の原因となります。
拭き取りあとを残さず注意して取り除き、清掃用具は一方向へと動かすことが重要です。
清掃作業が汚す原因になることも忘れずに
清掃作業自体が汚れを生み出す原因になることを意識し、発塵を抑えるため静かに清掃を行うことが重要です。
再汚染を防ぐことを考えながら用具や腕の動かす方向を決めて行いましょう。
清掃用品の管理方法と選び方
クリーンルームの清掃を確実に行うためには、清掃用品の管理と選び方も重要なため注意すべきポイントを紹介します。
バキューム掃除機
クリーンルームの掃除では、一度集めたゴミを再び飛散させないことが重要です。そのため、バキューム掃除機は吸引した空気の濾過方法に着目して選ぶ必要があります。そこで吸引した空気を室外の別の場所へ移動するか、高性能なフィルターによって濾過するかといった選択肢から選ぶことが重要です。
セントラル方式の掃除機であれば、吸引したゴミの混じった空気を室外の別の場所に移動させてから濾過するため、吸引したゴミがクリーンルーム内で再飛散することがありません。
吸引器が内蔵されている掃除機の場合は、HEPAフィルターまたはULPAフィルターを備えたもので、クリーンルーム用として設定されているものを使います。
- HEPA:高性能エアフィルタ(0.3µm粒子を99.97%以上捕集)
- ULPA:超高性能エアフィルタ(0.15µm粒子を99.999%以上捕集)
近年ではHEPAフィルターを使うことのできる一般向けの掃除機も普及していますが、クリーンルーム用のものは排気の向きや強さが工夫されています。排気が上向きになっていることで床に堆積したゴミの再飛散を防ぐものや、排気の風速を弱くして空気を撹乱しないようにしているものがあります。
このようにクリーンルーム用のものは再汚染を極力防ぐよう設計されているため、専用の掃除機を使用することをおすすめします。
ワイパー
ワイパーは、クリーンルームのクラスに適したものを使用しましょう。一般的にポリエステルのワイパーがクリーンルーム用として普及していますが、クリーンルームのクラスによってはおすすめできないものもあります。
繊維からの発塵がなく厚みのあるものが使いやすく、ゴミを集める動作と拭き取りの両方に適しています。
限度基準のサンプルを作り、基準以下になった場合に交換するようなルールを作ると標準化が可能です。
モップ
モップはさまざまなタイプがあり、ドライ清掃とウェット清掃で使い分けられます。
一般的にクリーンルームの清掃はドライ清掃が行われますが、水拭きでの清掃や洗剤使用後の拭き上げ清掃など、床が濡れているウェットな状況では、吸水性に優れ繊維から埃を発生させにくい、PVAスポンジ等が使いやすくおすすめです。
清掃後には毎回モップの汚れを確認し、付着したゴミを除去します。こちらも限度基準サンプルを設定し、基準以下で交換することで清掃レベルを維持します。交換にはある程度コストがかかるため、耐久性の高いスポンジがおすすめです。
業務用のスポンジであれば一般的なスポンジに比べて、吸水性や耐摩耗性などあらゆる面で性能が高く清掃効率の向上に期待できます。吸水性の一つをとっても、1度で多くの水を吸水できる業務用のスポンジであれば作業時間の短縮につながります。
また、クリーンルームの清掃ではクリーンルーム内の機材を傷つけないことが大切です。機材の表面を傷つけることなく、清浄度の向上につながるため、必ず柔軟性の高い業務用のスポンジを選択しましょう。
クリーンルームの清掃は用具の選定も重要
クリーンルームの清掃について、必要性や清掃時のポイント、清掃用品の選び方や管理方法などを紹介しました。クリーンルームは清掃を行うことで清浄な状態を維持できます。確実な清掃をするためには、清掃用具の管理や選定も重要となります。
アイオンのPVAスポンジは優れた吸水性を持ち、洗浄、拭き取りにおいて高い性能を発揮します。クリーンルームの清掃においても微粒子の除去に効果的で、多くのクリーンルーム清掃にも使用されている実績があります。クリーンルームの清掃には、アイオンの製品をご活用ください。