アイオン株式会社

  • ホーム
  • コラム
  • 無菌室の作り方とは?仕組みや維持管理のポイントを徹底解説

COLUMNコラム

無菌室の作り方とは?仕組みや維持管理のポイントを徹底解説

無菌室の作り方とは?仕組みや維持管理のポイントを徹底解説

無菌室は、医療機関や研究機関など、空気中に漂う微粒子や微生物をできる限り排除し、少なくすべき場所に作られます。また、無菌室内は空気中よりも微粒子や微生物が少ない状態に保つ必要があるため、作り方や維持管理の方法が難しいものです。そこで本記事では、無菌室とはどのようなものか、無菌室の仕組みや作り方、維持管理のポイントについて詳しく解説します。

無菌室とは、さまざまな目的のために無菌状態にある部屋のことを指します。

無菌室とよく似たものとして「クリーンルーム」がありますが、無菌室の中には無菌状態を保つためのクリーンルームがあり、「BCR(バイオロジカルクリーンルーム)」と呼ばれます。そもそもクリーンルームには「ICR(インダストリアルクリーンルーム)」とBCR2種類があり、それぞれ以下のように異なります。

  • ICR……主に電子機器系の製品を扱う施設に設けられるもので、空気中における浮遊微小粒子が管理された空間。半導体製造や精密機器の組み立てなどにハイレベルの清浄度が求められるクリーンルーム。
  • BCR……主に微生物や細菌類の侵入が許されない設備や、無菌状態が求められる無菌室で使われる。空気中における浮遊微生物が管理された空間。細菌の侵入が許されないため、徹底的に滅菌と消毒が必要なクリーンルーム。

クリーンルームのクラス

クリーンルームのクラスは、清浄度によって1から9に分けられています。もともとはアメリカ連邦規格という規格を使っていましたが、近年は国際統一規格のISO規格が普及しつつあります。ISO規格は0.1μm以上の粒子が1立方メートルあたりにどのくらい存在するかを表したもので、100個であれば102乗なのでクラス2100,000個であれば105乗なのでクラス5と表記します。

クリーンルームのクラスについて、詳しくは以下の記事でご紹介しています。

→「クリーンルームのクラスとは?業種別に求められるクラスの違いも紹介」

無菌室が清浄度を維持するためには、空気循環と陽圧の2つの仕組みがあります。それぞれの仕組みについて、詳しく見ていきましょう。

空気循環

無菌室の空気循環について、3つの循環方式を説明します。いずれも空気が無菌室内に溜まらず、常に循環し続けるように設計されています。

  • 非一方向流方式(乱流方式)……天井に吹き出し口を設け、気流を四方に拡散させてから室内下部の吸い込み口に流す方式です。空気の流れが一定でないことから、管理しやすくさまざまなクリーンルームで利用されています。ただし、一部気流が溜まりやすいことから、半導体工場など高い清浄度を求められる環境には向いていません。クラス37程度の、比較的清浄度が低めのクリーンルームで使われます。
  • 水平一方向流方式……吹き出し口の対面、もしくは天井に吸い込み口を作ることで、気流を水平にする方式です。空気の流れが一方向になるため、微粒子が拡散されにくく、排出されやすいというメリットがあります。後述する垂直一方向流方式と比べると室内全体の清浄度が劣るため、クラス57程度の清浄度が低めのクリーンルームで使われます。
  • 垂直一方向流方式……天井に吹き出し口を設け、床下部分に吸い込み口を作って気流を垂直に流す方式です。水平一方向流方式と同じように、空気の流れが一方向になることから、微粒子が拡散されにくく排出されやすいのがメリットです。このため、クラス15レベルの非常に高い清浄度が求められるクリーンルームで多く使われます。

陽圧

外部から異物が入らないようにするためには、無菌室内の圧力を外部よりも高い状態にしておく必要があります。これを「陽圧」と言い、空気が気圧の高い方から低い方へ流れる性質を利用した仕組みです。

陽圧を作るためには、HEPAフィルターなどの特殊なフィルターを通した清浄な空気を室内に供給し続けます。これにより、もともと室内に存在していた微粒子や微生物を含む空気が、押し出される形で室外へ出ていくのです。

クリーンルームの陽圧については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。

→「クリーンルームの陽圧とは?陽圧によって清浄度を保つ仕組みを解説」

ここでは、無菌室の作り方や運用するうえで注意点を紹介します。

無菌室の作り方

以下の3ステップによって無菌室を作ります。

  1. 密閉する……空気とともに余計な微生物や微粒子が入ってこないよう、清浄な空気の吹き出し口と空気の吸い込み口を除くすべての場所を密閉する。
  2. 清浄な空気を供給する……HEPAフィルターやULPAフィルターなどを使い、清浄な空気を供給する。
  3. 排気を行う……前述のように、床や反対側の壁に設置された吸い込み口から、空気を排出する。

無菌室を運用するうえで注意すべきポイント

次に、無菌室を運用するうえで注意すべきポイントは主に以下の3つです。

  • 入退室時……人間は衣服や人体から大量の塵埃を発生させてしまうため、全身を覆う専用のクリーンウェアやマスクを身につけ、二重扉になった出入り口でエアシャワー(清浄空気)を浴びて塵埃を落としたうえで入室する。出入口の床には粘着マットを敷き、靴底や装置下面の塵埃を除去する。
  • 使用する用具……無菌室内では使える用具が限られる。例えば、紙の繊維や鉛筆・シャープペンシルの芯から塵が出るため持ち込み禁止のところが多い。代替として、発塵を抑えたクリーンペーパーを使ったり、ノック式でないキャップ式のボールペンを使ったりする。
  • 無菌室内部での行動……走ったり大声を出したりしないのは鉄則。汗をかいてナトリウムイオンが発生したり、大声によって飛沫が飛んだりすると汚染の原因になるため。

無菌室の維持管理には、ハード面とソフト面、モニタリング、ドライ化とカビ対策の4つのポイントがあります。

ハード面の維持管理

無菌室を構成する機器類について、定められた性能が維持できているか常にチェックしておきましょう。性能が低下している、または低下しそうな兆候が見られた場合には、もとの性能を維持できるような予防保全、保守管理が求められます。

ソフト面の維持管理:無菌室の4原則

無菌室には、以下の4つの原則があります。

  • 持ち込まない……埃やゴミ、微生物や微粒子を持ち込まない。前述のようにエアシャワーを浴びることでリスクを軽減できる。
  • 発生させない……服のホコリ、髪の毛やフケ、汗などに注意する。前述のようにクリーンペーパーやボールペンを使ったり、走ったり大声を出したりしないことで避けられる。
  • 堆積させない……ホコリやゴミを溜めないこと、微生物をつけないこと。掃除しやすい構造やゴミ溜まりを作らない設計にするなど。
  • 排除する……ホコリやゴミ、その発生源を排除し、微生物を殺菌する。排気の気流をなるべく妨げないようにする。

モニタリング

無菌室が設計・設定どおりに運用されているかどうか、定期的にモニタリングをして確認しなくてはなりません。要求されるクラス相当の清浄度が保たれているか、定期的に確認しましょう。

ドライ化とカビ対策

無菌室内で作業が行われるにつれ、必ず人やモノから塵や埃が生じます。そのため、湿度を下げて清掃を実施するとともに、殺菌してカビ対策を行いましょう。

無菌室は清潔が求められる医療機関や食品加工場、微粒子などの異物混入が忌避される半導体の製造などで使用されています。空気中よりも微粒子や微生物を排除した環境にすることが求められるため、空気循環や陽圧を利用して外部から微粒子や微生物が入り込まないような仕組みが一般的です。

しかし、人やモノが出入りする以上は必ずゴミや塵などが付着するため、清掃を行わないと清浄度が下がってしまいます。そのため、無菌室の定期的な清掃が不可欠です。

アイオンのスポンジを使えば、精密機械にダメージを与えることなく洗浄できるだけでなく、微細な異物を洗浄・除去することも可能です。無菌室内での機器の洗浄には、ぜひ一度アイオンのスポンジをご検討ください。

→製品情報:「精密洗浄」はこちら

ベルクリン

ベルクリン

水を含ませて使用する、ソフトなウエット式ワイパーで、微細気孔がパーティクルや水分を確実にキャッチします。さらに、紙、繊維素材のような毛羽立ちや脱落が無く、再生使用も可能です。
ベルクリンモップ

ベルクリンモップ

除塵性・吸水性に優れたベルクリンを、さらに幅広く、機能的にお使い頂くために設計された軽量・薄型タイプのモップです。
ページトップへ